砂浜夢
砂浜を行く夢をよく視る
波打ち際には点々と
貝殻やカニの穴が見えるが
私にはもはやそういった風情の姿形を
豊かな質感を
確かめる心はなし
心
ポケットが破れていたせいだ
どこに落としてきたのか
みすぼらしい姿形のものであったから
清掃員に吸殻と間違われ掃かれたか
心無き身体は呆然としかし
急き立てられ海岸線を行く
心ともなわぬ曖昧な視角で
目玉に押印された貝殻の波形は
数歩歩くだけで波音に磨耗し
どこまでも遠い思い出となる
急ぎ勇めと波が急く
視角はいよいよ曖昧モコ
いまや目先にあるびいどろ石も
遠い未来の思い出か